「越後みその賞味期限の目安の作成」結果について
【調査・研究報告】
新潟県味噌醤油工業協同組合は、新潟県農業総合研究所食品研究センターと連携し、令和5〜6年度の2年間にわたり「越後みその賞味期限」の研究を実施しました。その結果、多くの場合で、常温保存では9か月程度、冷蔵保存では12か月以上の保存が可能であることが示されました。この結果は、微生物検査やpHなどのより科学的根拠に基づいた賞味期限設定の参考となるものです。
令和7年9月29日
令和5~6年度受託研究「越後みその賞味期限の目安の作成」要約
新潟県農業総合研究所食品研究センター
1 供試試料及び試験方法
(1)供試試料は、新潟県味噌醤油工業協同組合傘下の企業15社の28商品を用いた。供試した味噌の水分は、日本食品標準成分表(第8改訂)の赤色米辛味噌よりもかなり高い概算値で、おおむね越後味噌の特徴に該当すると考えられた。
(2)(1)の味噌の一部を重複し、25℃、20℃、10℃の複数温度で保存した。その結果、合計36試験区にて令和5年6月から令和6年9月まで15か月間の保存試験を行った。
2 結果
(1)pH
初発及び保存中において、一般的に米辛口味噌のpHの下限とされる4.8を下回った味噌もあったが、官能評価では腐造による酸敗でないため問題はなかった。また、味噌は保存中も残存酵素などの影響でメイラード反応やストレッカー反応が進み、過熟となり、pHが低下し呈味性も低下する。その目安をpH4.6と設定した場合、25及び20℃保存の全26試験区において9か月で1検体、12か月で13検体が下回ったことから、概ね9か月までは過熟の影響が強くないと判断できた。なお、10℃保存の全10試験区では、15か月でも最も低い検体のpHは4.78であった。
(2)一般生菌数・耐熱性菌数
一般的な米辛口味噌は塩分が10%以上で水分活性も低いため、食中毒菌はほぼ増殖できない。また、混入保存試験では大腸菌や黄色ブドウ球菌は室温保存および冷蔵保存ともに減少し、その減少は室温の方が早いことが報告1)されている。さらに、味噌は同一の発酵タンク内でも生菌数に偏りがあることや、アルコールの添加や混合具合によって生菌数が減少することもあるため、同一ロットにおいても生菌数にばらつきがある。
上記を前提とした場合、25℃、20℃、10℃のいずれの保存期間においても一般生菌数及び耐熱生菌数が著しく増加または減少することは無く、主発酵を行う耐塩性酵母などを除いて長期保存上の問題はないと判断できた。
*引用 1)窪田ら:日本醸造学会誌,76,821(1981)
(3)官能評価
味噌の色調は麹酵素による糖質やたんぱく質の低分子化に伴い、メイラード反応による生成物の影響で濃化が進行する。そして、熟成が進むにつれて残存酵素や基質の減少、および生成物濃度の増加による反応阻害などが原因で濃化速度は鈍化する。また、呈味性もメイラード生成物の一部がコクとなるため一旦は向上するが、その後は過分解等により過熟となり低下する。越後みそは赤色系米辛口味噌であるが、仙台味噌ほど濃厚ではなく「香味、色調のバランス」のとれた味噌とされている。
本試験における官能評価は赤色系米辛口味噌として評価を行ったが、上記のような越後みその特徴を考慮した場合、評価は個別項目および総合項目とも「3」以上が適切と考えられた。この評価軸を目安とした場合、25℃および10℃保存では9か月時点で「3」を超過する個別項目はなく、12か月では色調、香りで超過する味噌もあった。また、総合評価は9か月から12か月の間で最も低下しており、実質、9か月程度が香味の良好な賞味期限と考えられた。
また、10℃保存では、総合評価は12か月時点で「1.3」、15か月でも「2.3」となり、冷蔵であれば15か月でも品質が保たれるものと考えられた。
*味噌の官能評点は「1:良い」「2:やや良い」「3:ふつう」「4:やや劣る」「5:劣る=不可」の5点で実施。
3 まとめ
今回の試験結果から、供試した越後みその適切な賞味期限は以下のように考えられた。
保存温度20~25℃(常温):賞味期限約9か月
保存温度10℃(冷蔵):賞味期限約12か月から15か月
なお、各企業における賞味期限の設定については、個別の商品規格に基づき、官能評価などを参考により適切に設定することが望ましい。
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